関連資料 食品微生物の話

検査の意味

食中毒菌の検出には、通常3日以上を必要とします。検査結果が得られる頃には、食材は出荷もしくは喫食されている場合がほとんどです。抜き取り検査を実施する上で、検査食材から食中毒菌が検出されなくても、すべての商品(食材)の安全性を反映しているものではありません。
それでは食品微生物検査を実施する必要はないのでしょうか?
結論を出す前に、検査の目的や結果の解釈を整理してみましょう。

食品微生物検査の目的

食品微生物検査は、食中毒を防止することを大きな目的として、その手がかりとなる情報を得る手段の一つと位置づけられます(あくまでも情報収集の手段であって、当然のことながら検査するだけでは食中毒は防止できません)。
具体的には、"食中毒菌を探す"というはっきりした目的がありますが、それだけでよいのでしょうか?。喫食後に検査結果が報告されている状態では、検査する意味が薄いのではないでしょうか?

食中毒が発生するには
  1. 食中毒菌によって食材が汚染される。(1次汚染や2次汚染)
  2. 汚染菌が食中毒を起こす菌量(発症菌量)まで増殖する。

といった2つの要素が必要になります。
いずれにしろ、原材料の選別を含めた、食材を扱う一連の工程の中で何らかの不備があることが原因になります。
そこで、食品微生物検査は食中毒菌を探す目的に加え、食品の取り扱い上の環境が衛生的であるかどうか判断するという目的があり、こちらの方も重要といえます。

食品微生物検査項目

食品微生物検査の項目は、食中毒菌そのものを検出する項目と、グループ分けした細菌の菌数を調べる項目に大別 されます。食中毒菌を検出する項目は、直接食中毒菌を探すわけですから、検査した食品の危険性を直接反映します。グループ分けした細菌の菌数を調べる項目は、汚染指標菌と呼び、一般生菌数や大腸菌群数などが含まれます。食中毒菌そのものを検査しているわけではなく、グループ中の菌の総数により汚染状態を表します。では、なぜこのような項目を検査する必要があるのでしょうか?

一般生菌数が多く検出された場合では食品中に高度の細菌汚染もしくは食品中での細菌増殖が推測され、作業工程(環境)や温度管理を中心とした保管や貯蔵方法などに不備がある可能性が考えられます。大腸菌群と腸管感染症を起こす一部の菌(サルモネラO157・チフスなど)は生息している場所が同じであること、また環境中(空気など)からは比較的検出されにくいことから、大腸菌群が検出された場合は、ヒトや動物の糞便が直接または間接的に食材に接触したと考えられ、食中毒発生の確率が高くなるものと判断します。このような理論に基づいて、汚染指標菌は食品の取り扱いを間接的に推測する目的で用いられます。

結果の解釈

食材の特性による違い

食材の種類によって、結果の解釈が異なります。

たとえば、加熱食材の場合は加熱により通常は菌数が低く、逆に非加熱食材の場合は菌数が高くなってしまいます。一般生菌数では、極端に高値の場合には加熱の有無に関係なく保存の不備が疑われます。その汚染源は加熱食材の場合には加熱後の汚染もしくは耐熱性菌などの存在が考えられ、非加熱食材では原材料由来の汚染が濃厚となります。大腸菌群は前述したとおり糞便汚染の指標ですので、基本的には検出されないことが望ましいのですが、現実には食肉(生)において解体時における家畜の腸管からの汚染をゼロにすることは不可能であることから、少数であれば許容されています。また、乳酸菌は乳酸菌飲料から高度に検出される分には正常といえますが、乳酸菌を意図的に添加していない食材であれば異常値と判断します。

以上のように食材の種類によって判断基準が多種多様なため、統一した基準値を設けることができません。当社では、お客様が理解しやすいように各都道府県の食材群ごとの指導基準と食品衛生法の基準をもとに、独自の基準を設けて汚染状態を判断しています。食中毒菌検索の場合はどの食材から検出されても食中毒の危険性が高くなりますが、食材と発生しやすい食中毒菌との間には一定の傾向があります。食品微生物検査を依頼される時は目的を明確にし、食材の種類をよく考慮して検査項目を選択することが大切です。

食中毒の危険性について

汚染指標菌は、食品の取り扱い工程の良否を判断するもので、食中毒の危険性と相関しない場合があります。たとえば、下記のような結果の場合

例1 食材:肉じゃが

  • 一般生菌数 1.0X106 個/g
  • 大腸菌群数 1.0X104 個/g

加熱食材が高度に汚染された例ですが、この肉じゃが中に食中毒菌が存在しなければ食中毒は発生しません(ただし、上記のような結果では加熱後の食品の取り扱いに不備があり、いつ食中毒が発生してもおかしくない状態と判断できます)。
逆に、下記のような場合では、

例2 食材:卵焼き(加熱済み)

  • 一般生菌数 5.0X103 個/g
  • 大腸菌群数 陰性

加熱惣菜として判断すれば良好な結果であるといえますが、この卵焼きの一般生菌数の正体がサルモネラであった場合、200g程度食べれば、かなりの確率で食中毒となります。また、カンピロバクターなど一般生菌の培養方法では検出できない食中毒菌の場合、食中毒の危険性は一般生菌数から推測することは不可能になります。したがって、汚染指標菌の場合は、データからその食材に対する食中毒の危険性を調べているのではなく、食品の取り扱い上の衛生状態を調べており、高値の場合は、その食材の取り扱い上で食中毒菌が侵入する可能性も大きくなります。つまり、食中毒菌が侵入してきた時は、高頻度に食中毒が発生することを示唆しています。良好な結果の場合は、食中毒菌が侵入する頻度も低く、食中毒に至る可能性が低くなるといえます。
しかし、陰性の場合は検査に用いた食材のみについて安全というだけで、同一ロットであっても他の食材まで100%安全とはいえません

最後に

これで、食品微生物検査のついて基本的の事項について理解されたと思いますが、つまり、食品微生物検査というのは、食中毒を防止するための情報を得る手段の一つですので、検査に用いた食材固有についての評価だけでなく、汚染状態を把握するためのできるだけ多くの情報を得ることが大切です。警察が状況証拠を鑑識に回して、その結果から犯人の行動を推理するのに似ています。これらの鑑識と警察の機能を兼ね備えているのが、当社の役割の1つであります。検査結果に誤った解釈をすることは非常に危険ですし、解釈ができなければ検査自体がムダになってしまいます。

当社では、お客様が安心して商品を提供できるように、検査はもちろんのこと、検査結果 の解釈から原因追求、対策提案など、食品衛生に関する総合的なサポートとして取り組んでいます。お気軽にご相談ください。