PCR法の原理について

1. DNAについて

DNA: Deoxyribonucleic acid (デオキシリボ核酸)

DNAはデオキシリボヌクレオチドが重合したもので、二重らせん構造をしており、2本のヌクレオチド鎖が互いに逆向きでならんでいます。
デオキシリボヌクレオチドは、糖(デオキシリボース)、リン酸、塩基からなり、塩基の種類は4種類あります。(アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G) )

DNAについて

2. DNA合成と構造について

DNAが合成される際、すでに存在するヌクレオチド鎖のデオキシリボースの3´位の水酸基(OH)に新しいヌクレオチドのデオキシリボースの5´位のリン酸基が結合します。この繰り返しでDNAは伸びていきます。
2本鎖の間では、アデニン(A)は必ずチミン(T)と、シトシン(C)は必ずグアニン(G)と向かい合い、それぞれの間に水素結合ができ、安定した構造を保っています。この性質により、DNAの1本の鎖の配列が決定されると、もう片方の鎖の配列も決まってきます。

DNA合成の様子

3. PCR法について

PCR:PolymeraseChainReaction(ポリメラーゼ連鎖反応)

PCR法はDNA配列上の特定の領域(目的領域)を、耐熱性DNAポリメラーゼを用いて増幅させる方法です。鋳型DNAが極微量でも存在していれば目的領域が増幅されます。
PCR法では、次の3つのステップを繰り返すことによりDNAを増幅します。
1.熱変性(温度帯:94~96℃)
プライマーは1本鎖DNAとしか結合できません。
そのため、鋳型2本鎖DNAを熱によって1本鎖に分離します。
2.アニーリング(温度帯:55~60℃)
温度を下げて、鋳型DNAにプライマー(増幅したい領域の両端に相補的な配列をもつ1本鎖
DNA)を結合(アニーリング)させます。
3.伸長反応(温度帯:70~74℃)
耐熱性のDNAポリメラーゼが良く働く温度に上げ、DNAの伸長反応を行います。

サーマルサイクル

4. アガロースゲル電気泳動法によるPCR産物の検出

電気泳動法は溶液中のDNA断片の長さなどを知る手段としてよく使われています。

DNAはその構成要素にリン酸基をもつことからマイナス(-)に荷電しており、DNA断片を含む
溶液に電流を流すと、プラス(+)極に向かって移動します。

立体的な網目構造をもつアガロースゲル内でDNA断片を泳動させると、プラス(+)極に向かって、短いDNA断片ほど早く移動し、長いDNAは遅く移動することから、DNA断片を長さの違いによって分離することができます。
すでに長さの分かっているDNA断片を含む溶液(分子量マーカー)を同時に泳動することで、 未知のDNA断片の分子量を推定します。

ゲル内のDNAは目にはみえませんので、色素を使ってDNAを染色します。

電気泳動

5. 食品検査におけるPCR法の活用

食品検査において、PCR法は様々な検査に利用されています。
例を下記に示します。

・遺伝子組換え食品混入の検査

→平成20年6月18日食安発第0618001号

・アレルギー物質を含む食品の検査

→平成21年7月24日食安発第0724第1号

・ノロウイルス検査

→平成19年5月14日食安監発第0514004号

・微生物の迅速同定法

→日本薬局方「遺伝子解析による微生物の迅速同定法」

・・・・など

6. 検査の概要:(例)食品アレルギー「落花生」の定性PCR検査

検査の大きな流れは下記の通りです。

1.試料の破砕・均一化

2.DNA抽出DNA精製度の確認と定量

4.PCR増幅

5.アガロースゲル電気泳動によるPCR増幅産物の確認

6.結果判定

DNA抽出は1調整試料(均一化した試料)につき2点並行で行い、それ以降、PCR増幅産物の
確認に至るまでの全操作は、この2点に対し独立並行で行います。

7. 判定について:(例)食品アレルギー「落花生」の定性PCR検査

(注意.概要を示しています。詳細は「アレルギー物質を含む食品の検査方法について」
(食発第1106001号平成14年11月6日)(最終改正平成21年7月24日食安発第0724第1号)を
ご参照下さい。)

植物DNA検出用プライマー対を用いたPCRで特異バンド(ここでは124bpのバンド)が検出され、
落花生検出用プライマー対を用いたPCRで特異バンド(ここでは95bpのバンド)が検出された
場合、落花生陽性と判定します。

植物DNA検出用プライマーでバンドが検出されない場合は、検知不能と判定します。

判定について

8. 参考文献

遺伝子の生物学/石川統著/株式会社岩波書店
やさしいバイオテクノロジー/芦田嘉之著/図書印刷株式会社